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2013.12.17 Tuesday

【記事】なのるなもない INTERVIEW

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    その鮮烈なリリシズムで、日本語ラップ表現の地平をぐぐっと拡げた重要作品『Melhentrips』から早8年。降神の一翼としても、もちろんソロ・アーティストとしても徹底的にオリジナルな存在であり続けてきた彼=なのるなもないから届けられた『アカシャの唇』は、レコーディング・アルバムであり、1冊の本でもある不思議な作品でした。今年のリリースの中でも「待望」の2字がこれほど似合うものはないと思われる本作について、ゆっくりと、真摯に語ってくれたインタビューをお届けします。


    WE NOD(以下W):アルバムのリリースおめでとうございます。待ちに待ってましたよ(笑)。ここ数年、あちこちのライブや客演で出会う機会も増えてましたけど、やはり今回のリリースにはリスナーも喜んでいるんじゃないかなと思います。

    なのるなもない(以下N):ありがたいです。うん、やっぱり出るまでに色んなことがあったよね。まず家族を持ったでしょ、そこのバランスの取り方も最初は分からなかったしね。ずっと自分勝手にやってきた人間がそういう所に飛び込んだわけだから。それまで頭の中で考えてきたことはガラっと変わるし。人間的にはもっともっと成長して行かないとな、っていう気持ちにプッシュされて……そういうことも影響したと思う。リリースはあまりしてなかったけど、その間に子供たちはどんどん大きくなって……ある意味「生きた作品」をつくってきたとも言えるし(笑)。

    W:実際、その中でも制作は地道に続けてたんですよね。

    N:うん、そういう状況で辞めちゃうのは自分としてもナシだなって思って。逆にそういう状況でもやれることがあったら夢があるなと。例えば将来「子供のためにやりたい事を我慢して育ててきた」とか言ってもさ、子供からしたら「やれば良かったじゃん!」なんて思うかなって。

    W:(笑)。

    N:あと大きかったのは、自分の家でレコーディングするようになったことかな。それまではスタジオだったり、g Oの家に行って作業してくることが多かったんだけど、やっぱりやりたい時にやれる、曲としてまとめたり、ブラッシュアップしたりできるっていうのは強いよね。これがなかったら、リリースにあと何年かかったか分からない。めちゃくちゃありがたいことですね。

    W:自分の中でのいろんな変化や、環境の変化、周りの存在っていう色んなタイミングが一つになったことで、今回のこの豊かな作品ができあがったってことですよね。今名前の出たg Oさんも、アルバムのトラックのうち半数を手がけるプロデューサーで、間違いなく本作のキーパーソンだと思うのですが、他にもリリースまでの流れに寄与してくれた多くの人たちがいたのではと。

    N:ビートを提供してくれた人はもちろんだし、今回関わってくれた人が全員そうなんだけどね。アルバムに参加してない人もキーパーソンだったりするから。例えば、ヤマダタツヤ(Tyme.)さんとかね。

    W:まさにそうですよね。今回の立ち位置としては、相談役的な?

    N:そうそう。自分が音楽に向かう上で、いつも応援してくれてた人だからね。よく家にも遊びに来てくれてたし。何を作るかっていうことはあんまり相談しないんだけど、もっと根本的なことを話したり、機材のこと聞いてもらったり。家で一番使ってるMACKIEのミキサーは、ヤマダさんが「持ってっていいよ」ってくれたやつだしね(笑)。そういう所でいつもモチベーターとして助けてもらってた。

    W:また今回は、ご存知SUIKAや小林大吾さんを送り出してきた FLY N' SPIN RECORDSからのリリースということで、気心の知れたチームがバックアップしてくれたと言えるのかなと。

    N:俺一人だとこういう形にはならなかっただろうね。(レーベル・オーナーの)山路さんも「本を作りたい」っていうアイデアを後押ししてくれたし。PVを作ってくれた
    シミズタカハルさんが装丁デザインも引き受けてくれて。

    W:このブックレット型のパッケージですね。過去のレーベル作品でも発揮されてた紙へのこだわりがすごく出ています。同じくブックレットになっていたSUIKAの1stアルバムを思い出したりしました。

    N:普通のCDとか本とかを自分が出すとしても、限界かなっていう気持ちがあったんだけど……その限界を超えて、もっともっと外にっていう形でサポートしてくれたんだよね。「手に持って面白いものを作ろう」って。デジタル化してくと、どうしても買って持つ楽しみみたいなものが少なくなってきちゃうけど、その逆をやりたいなって思ったら……こんなのになっちゃった(笑)。まあラップのリリックだから、詩集として面白いか自分ではなかなか客観視できないんだけど。

    W:客観視ということで言うと、この8年間でどういう変化があったのかとか、自分ではあまり考えたりしないですか?一リスナーとしては1stの『Melhentrips』と聴きくらべたくなって、実際今すごく聴き返してるんですけど。

    N:基本的にいつも自分の中のモチベーションだったりトラックだったり、色んなものに「書かされている」っていう思いがあるんだよね。そこはあんまり変わらない。でも書き方のレベルでは、どんどん「ここはこうする」っていうのが明確になってきてるとは思う。最初に思い浮かんだビジョンをよーく理解して、形にしていくっていうプロセスの部分だね。

    W:個人的に一つだけ変化を感じた所を挙げると、前作のキーワードだった「旅」のモチーフ、これは今回も無くなったわけではないんですが、そこに新しい意味合いというか、新しい色が加わってはいないですか? これはPVになった「冒険のススメ」を聞いて思ったことなんですが。





    N:今はツアーなんかを除くと、実際の旅ってほとんどしなくなってるんだよね。例えば自分がタイに行ったり、アメリカに行ったりオーストラリアに行ったりすれば、その場所で書かされるものってあるんだろうなとは思うんだけど。でも、今この現実世界の中で、その場所に居て何かを変えていくことだったり、書いていくことだったり、そっちの方がすごいんじゃないかっていう自負がある。そうありたいなって思うんだよね。

    W:なるほど。

    N:流れる水は淀まないし、転がる石は苔が付かない、のかも知れないけど……淀むし、苔も付くけどそこからやる、そういうパワーを身につけないといけないなって思って。「冒険のススメ」の話をすると、もともとこの曲はINNOVATIONっていうパーティーがきっかけでできあがったんだよね。

    W:ここ2年ほどの間で降神としても、ソロでも出演してましたね。僕やWE NODとも縁のあるクルーですが、面白い動きをしてますよね。そこから受けた刺激もあったのかなと。

    N:俺もg Oも最初に出た時からINNOVATIONが好きだからね。g Oがトラックを仕上げてきて、よしやってみようって感じで。最初はコンクリート・ジャングルを生き抜くための掟、みたいなイメージから始まったんだよね。もちろんそれをそのままの形で出すわけじゃなくて、色んなフィルターを通ってるんだけど。

    W:「未来はきっとおいでおいでをしていて」っていうラインが印象的でしたが、さっきのお話を受けると、どうなるか分からない未来に向けて、変わっていくこと自体が冒険っていうことですよね。

    N:そうそう。日本はモノが溢れてる一方で自殺者が多かったりするし、いろんな環境の奴がいるよね。でもせっかく生きてるんだからそんな勿体ないことはしてほしくない。どっちにしても人は死んじゃうんだけどさ。だからこそそれを感じて、楽しんで生きてほしいなって。で、例えばさ、自分の子供が、一緒に布団の中にいる時なんかにふと「人は死んでしまう」ってことに気づいてしまった時。何て言う? 人はその時どうなるのか、どう対処するのかなんてこと……全人類が分からないんだよね。でもやっぱりそういう、自分が曖昧にしてきた難問に絶対ぶち当たるから。それに何て答えようかなって考えたことをこの曲に詰め込んだ気がする。

    W:そう考えると、大人も子供もなく普遍的なテーマってことですよね。あともう一つこの曲で面白いと思った点があるのですが、それはアルバムで最初に公開されるリード・トラックに3拍子の曲を持ってきたことかなと。本人にとったら普通のことなのかも知れないですけど。

    N:まあ全く苦にならないかっていうと嘘だけど、わりと普通だよね。アルバムに入ってない曲で一度7拍子みたいなオケもあって、それはちょっと大変だなと思ったけど(笑)。でもそういうリズムの取り方の中でまた新たな自分が見えたり、グルーブしていく部分を発見できたりして面白いから、楽しんでやってますよ。前のアルバムでもそうだったし。

    W:前作だと「僕の知る自由」がそうだし、あと「まわらないで地球」も6/8系統の不思議なビートでしたね。

    N:降神でも「鬼畜舞踏会」でやってるし(笑)。

    W:懐かしい(笑)。ともあれ、今作はビートの側面でも非常にオリジナルなアルバムだと思っています。g Oさん・yamaanさんの共作による「ラッシュアワーに咲く花を見つけたけど」とか、同じくg Oさんの手による「アルケミストの匙」とか、ラッパーに提供するビートとしてはやはり異色というか、大分攻めてますよね。

    N:こういうのは大好きです。まあ、自分の中ではそんなに区別なく受け止めてるんだけど。「ラッシュアワーに咲く花を見つけたけど」は元々インストのトラックとしてある程度形ができてたし。あ、でも「アルケミストの匙」は最初はただのワンループだったね。どこで(拍を)取ろうかな?っていうところから、これは面白いグルーブができそうだなって思って。

    W:出発点の状態からは全然想像もつかない展開になってるのかなと。

    N:そうそう、ビジョンは最初から同じなんだけどね。g Oとお互いの思い描いていることを表現し合って、やりとりしながら形を変えていく、その繰り返しだね。この曲と「冒険のススメ」はその最たるものかもしれない。





    W:そう言えば、ほぼ全曲でIllicit Tsuboiさんがミキシング・エンジニアを務めているっていうことが新鮮な驚きだったんですが。やっぱりTsuboiさんとも綿密なやりとりがあったんでしょうか。

    N:そうだね、Tsuboiさんのスタジオに行って意見を交わしたり、色々調整してもらったりもしたし。Tsuboiさんのミックスは本当にひずみも含めて美しいって言うか、ピリピリする感じが良いんだよね。お願いして良かったなと。

    W:一方、声で参加しているMCやアーティストも非常に印象的な爪痕を残していますね。特にimaginionのtaoさんの名前が登場することに喜んだ人は多いと思います(「STYX」「アイオライト」の2曲に参加)。

    N:taoとは去年から何曲か作ってたしね。一緒に住んでた時期もあるし、今でもよく遊びに行ったり来たりしてる……まあ家族だね。近い関係だからあんまり言わないけど、すごく面白いやつなんだよ。珍獣っていうか(笑)。

    W:「アイオライト」はtaoさん、志人さん、totoさんを迎えているんですけども、この曲は特にライブで聴き覚えがありますね。

    N:そうだね。志人は新しくバースを録り直したりもしてるけど。

    W:「アイオライト」というのは宝石の名前で、かつてバイキングが航海する際に羅針盤の代わりとして使っていたという話もあるそうですが。

    N:集まって曲作りする時、やっぱり最初は「さあどうする?」っていう所から始まるよね。まさにそういう時に、方向性を見せてくれる、方角を定めてくれるものっていうことで、素敵なタイトルになりそうだなって。俺や志人やそれぞれが考える自分たちなりの道標とは何か、っていうことを歌ってる。これだけは間違いないでしょ、っていうもの。

    W:例えば、ご自身のバースについて言うと?

    N:俺たちは全部循環するから……例えば昔誰かが飲んでた水が今自分の飲んでる水だったりするわけだし、自分が誰かになることだってあるかも知れない。死んで土になって地球に、宇宙に帰って行くとすれば、「俺」も「お前」も一緒じゃんって。そういう風に考えられたら、もっと心あることをしていけるんじゃないかなって。難しいことだと思うんだけどね。でもそういう所に目を開いていかないとね。

    W:これもリリックを読み込んでほしい曲の一つですね……という感じで全トラックについて制作秘話を聞きたいのは山々なのですが(笑)、最後にアルバムを通じた質問もさせてください。こうした色んな幅のあるストーリー、楽曲をアルバムにまとめていくに当たって、受け手のことをどう想定していたのかなと思いまして。こんな人に、こんな時に聴いてもらいたいっていうイメージはありましたか。

    N:どんな人に向けて、って言われると難しいんだけど……でも、いつも“なのるなもない”誰かに向かって書いてるのかな。道に迷った日でも、楽しい日でも、そういう誰かの人生に寄り添っていけるような作品ができたら、とはいつも思ってる。

    W:では本当に最後になりますが、読者に向けてメッセージをお願いします。

    N:うん、まあ皆へのメッセージはこれ(アルバム)に詰まってるので……生きてれば色んな気持ちになると思うんだけど、自分の位置を確かめられるように、またそこからポジティブになれるように、気持ち込めて作ってるんで。味わって聴いてみてください。少し長くかかっちゃったけど、次の作品もまた作りたいと思ってるし。もうちょっと早く出せるように(笑)。

    W:期待してお待ちしてます、ということで(笑)。今日はありがとうございました!


    (interview & text : yuichi ishikuro)



    ■ インフォーメーション
    なのるなもない Facebook Page : https://www.facebook.com/lipsofakasha
    アカシャの唇 試聴URL : https://soundcloud.com/nanashinotamashii



    【特典】「なのるなもない」未発表音源収録CDRが付属されます!
    【初回盤】CDサイズの絵本仕様。コラージュ・アーティスト「シミズタカハル」描きおろしジャケット及びブックレットを含むトータル・デザイン仕様。
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