2013.05.13 Monday

【記事】THE OTOGIBANASHI’S : インタビュー

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    「Pool」、あの妙な中毒性を持ったムービーが、ちょっとした騒ぎになってからまだ1年足らず。THE OTOGIBANASHI'Sのアルバムが僕らの元に届けられました。未だ誰にも発見されていなかった彼らが、この1年でシーンにその居場所を確保し、SUMMITとのディールを勝ち取っていったのは傍目にも痛快と言ってよい事件だったと思います。それからというもの、彼らのフレッシュなパフォーマンスや不敵な行動力は、あちこちの同年代や諸先輩方を刺激し、あるいは嫉妬させているわけですが、とにもかくにも今色んな意味で皆が気になっているラップ・グループと言ってよいでしょう。ここは折角の機会なのでザックバランにあれこれ聞いてみました。どうぞお楽しみください!




    WE NOD(以下W):すでにアルバムがかなりの話題になってる状況下でのインタビューなんですが、少し振り返った話もさせてください。個人的にこの1年ほんとによく顔を合わせてたんですけど、実際本人たちがどう考えて動いてきたのかは気になってる所なので。まず何と言っても「Pool」のPVの広まり方は劇的だったというか、日本のヒップホップでは珍しいぐらいバズってたと思うんですね。これはどこまで計算してたのかってところから聞いてみたいです。

    bim(以下b):もともと最初に、フリーのミックステープを(ネットで)出すか、SoundCloudとかで楽曲を上げるか、PVを上げるか、みたいな選択肢があって。in-dと2人で、学校帰りに確かマックで相談したんですよ。その時はまだPalBedStockは一緒じゃなかったので。

    in-d(以下i):そうだよね。PVでしょ、って感じですぐに意見が一致して。

    b:ビデオで見せた方がもっと奥が知りたくなるんじゃないかなって。やっぱり俺もSIMI LABの"WALK MAN"を見たときに、何だこの人達は?みたいな感じですごく知りたくなったし。


    W:おお、確信犯。ちなみに世代の違い的にも気になるんですが、10代で何か音楽を始めようっていう時にミックステープ、YouTube、SoundCloudっていう選択肢が出てくるのって結構普通のことなんですか?

    b:中学生の頃から周りは文化祭でコピーバンドをやってたりしたんですけど。いざ自分たちはラップをやろうと思った時に、発表の場所に困るっていうか、どうしようか迷った時期もあったりしたんですよね。


    W:じゃあYouTubeでっていう方向性が必然的に浮かび上がってきた感じだ。

    i:デモテープとかのモノも良いんですけど、YouTubeならすぐ見れるし視覚に訴えられるし、みたいなことを話しましたね。

    b:だから曲を作ろうというよりPVを作ろうっていう流れでしたね。その中で、皆がやってないことを探していった感じです。


    W:その結果があのフレッシュなPVになったわけですが……結局、誰と誰がTHE OTOGIBANASHI'Sなのかっていうのが最後まで謎のままですよね。PalBedStockが加わって3人で録った筈なんだけど、明らかにそれ以上の人数が前面に出てくるし(笑)。

    PalBedStock(以下P):フフフ……。

    b:A$AP Rockyの「Peso」のPVで、よく分からない人たちが一杯居るみたいな感じで(笑)。


    W:その匿名度高めで不敵な感じが新鮮だったと思うんです。で、PUNPEE君、OMSB君や、やけのはらさんといった面々が次々に反応して、tream.jpでインタビューがアップされて……っていう所からの盛り上がりはよく知られている通りですね。ライブし始めたのも早かったですよね? 一気に色んなブッキングが増えて。

    b:最初はもう、1回1回どこかで落ち込んでましたけど。


    W:うん、でも見る度に良くなっていった記憶がありますよ。実際短期間ですごい数のステージを踏んできたと思うんですが、その中であえて一番重要な現場を選ぶとしたら?

    b:5回目のライブをしたAVALANCHE 2(※2012年8月、代官山UNIT)ですね……やっぱり。すごく動いたわけじゃないのに、終わったあとは立てないような疲労感があって。あのステージはすごくでかかったですね。

    i:そうですね、やっぱり印象に残ってます。


    W:というか、あの時点でまだ5回目か……。

    b:そうです。直前の4回目のoath(※同じく2012年8月。PUNPEE、やけのはらと初共演)でも皆が盛り上がってくれて、良い流れだったんですよ。その過去の4回を超えないとっていう気持ちでやって、その通りベストな形でできたのがAVALANCHEでした。

    P:一つのラインに達した感じだね。


    W:SUMMITへの電撃加入も発表されましたし。

    SUMMIT増田(以下M):実は、それは前から決めてたことでもあって。だから最初のBaticaでのライブからずっと映像録ったりもしてました。


    W:なんと、そうだったんですね。実際、3人の参加はSUMMITとしても一つの節目になった感じがしますね。




    W:さて、増田さんも加わってもらった所でようやく『TOY BOX』の話題に行きたいんですけど、実際の所このアルバム完成に至るスピード感っていうのはどれぐらい意識的だったんですか?

    M:うーん、たまにレーベルの戦略が……とか言ってくれるんですけど、全くそういう風には考えてなかったです。十分な時間をかけたかったので、全く急いだ印象はないですね。実際、制作に入り始めたのはAVALANCHE2の前だから、7〜8ヶ月はかかってますし。

    b:そうそう、逆に延ばしてもらったぐらいですね。

    M:急いで中途半端なものを作るより、納得するまでやってくれと。「Pool」で話題になった時に、3〜4曲だけでもまとめてすぐに出した方がいいっていう意見をもらったりもしたけど……そういうやり方はあまり好きじゃなくって。やるなら一撃必殺でやるっていうのが好きなんですね。

    b:最初は、スタジオに入ってアルバムを作るって……この人何言ってるんだろう?って(笑)。

    P:うん。そんなに曲ねえよ!って。

    M:その間僕らが、今日スタジオに入ってますとか、良い曲が出来ましたとか、特にそういうことを公表したりもしないタイプだからかもしれないですね。まあそういうもので良いと思ってます。

    b:確かにそうだった……1回もtweetしたりしてないですね。


    W:そういう密かな動きを経てシーンにドロップされた『TOY BOX』ですが、別のインタビューでも言ってましたけど、聴く時間や場所を選ばない作品にしたい、っていう狙いは成功していると思います。

    b:やっぱりファースト・アルバムとしては、夏でも冬でも、いつでも聴いてもらえるモノが良いと思ったんですよね。


    W:でも結果的にその中には、相反する要素も色々詰まってるっていうのが魅力なのかなと。そもそもMCの3人とも、かなりリリックの書き方とか、スタイルが違うみたいですね。

    b:俺の書き方は自分でも変だと思うんですよね……ストックができなくて、30分で書けなかったら書けない。映画見ながら「あ、書かなきゃ」って書いたのが「Closet」になったり。あとは電車の中で書いたり、外で夕日見ながら書いたり……ラッパー向きじゃないのかも知れないんですけど(笑)。

    i:bimやPalBedStockとは一応、曲ごとのテーマみたいなものを決めてあるんですけど、俺の場合はそのまま具体的に書くっていうより、何らかのメッセージだったり自分の言いたいことをそのテーマの上にうまく載せたいっていう感じですね。bimやPalBedStockは言わないだろうなっていうことを言ったり、周りの人たちから聞いた話を自分のフィルターを通して言ってみたりとか。

    b:あとPalBedStockは俺たちより書くのがすごく早くて。俺が1バース書く間に3バースぐらい書いてますね。テーマは一緒のはずなんですけど、1行毎に箇条書きみたいな。


    W:うん、PalBedStockは良い異物感ありますよね。3人はそれぞれ住んでる所も違うし、通ってきた音楽も実は若干違うのかな、とか。例えばin-dは地元・藤沢のシーンを見てきてるだろうし、Wu-Tungが好きだったりして、90'sヒップホップ・ファンな所を隠そうとしないですよね。

    i:やっぱりWu-Tung、Killarmy、Boot Camp Clickなんかをずっと聴いてたんで……今は新譜も聴きますけど、芯の部分はあまり変わらないっていうか。OTGでのスタイルにもそういう初期衝動的なものがしみ出ちゃう時はあって、そこは違ってていいんじゃないかって思ってますね。

    b:俺とPalBedStockの2人は聴いてきたものは似てると思うんですけど、そこから受けてる影響は違うというか、枝分かれしているんじゃないかなと。


    W:逆にリリックから共通して浮かび上がってくる部分として、「あのテーマが今じゃ皆のアンセム」とか「僕らの曲が流れてる」「皆はOTGの虜」とか、自分たちのコミュニティが出来上がってる感じも出すじゃないですか。仲間たちの間で面白いものを自給自足してる感じ。

    b:レーベルや、エンジニアの方なんかも含めて、自分が楽しいと思える人たちだけで音楽もビデオも作れるっていう自信みたいなものはありますね。


    W:でも活動としては色んなシーンと関わって、違う文脈のイベントでも堂々とパフォーマンスしてる。そこが閉じてないっていうのが良いですね。

    b:自信があるからこそ、アウェイのイベントに行ってもいつも通りできるのかも知れないです。その場所を借りて遊んでるみたいな感じになる。


    W:なるほど。では、ビートについてもちょっと聞かせてください。特に一番多くプロデュースを手がけているdoooo君のこととか。

    b:doooo君は家がすごく近いんですけど、ミックスCDの選曲が良かったのでビート聴かせてってお願いして。初めて遊びに行った時にMPCに入ってた曲の一つが今の「K.E.M.U.R.I.」だったりしたんですよね。最初にSUMMITに送ったデモ音源のビートも、そのMPCの中からもらいました。


    W:「K.E.M.U.R.I.」にも「Closet」にも顕著ですけど、おそらく意図的に、低体温で削ぎ落とされたサウンドに仕上げてるじゃないですか。これはOTGからリクエストした結果なんですかね。

    b:「Closet」なんかはモロにそうですね、最初はあの倍ぐらい音が入ってたので一気に減らしてもらって。でもdoooo君自身も、元々ベースの無い不思議なビートが多かったりするんです。




    W:意見も言い合える良い関係っぽいですよね。

    b:3人で色んなリクエストをしながら一緒に作っていった感じですね。結構ストレートに言いましたけど、doooo君は常にその要求を上回るものを返してきてくれるので、すごく楽しくて。


    W:不思議なビートと言えば、レーベルメイトであるOMSB君制作の「Gana Gana Ganda」もかなり攻めてて面白かったですが。

    b:OMS君とskypeしてる時に突然「OTGに合いそうなビートができたから送るよ」って。まだ「Pool」しか出してない状況でアレを送ってくるって……この人すごいな、カッコイイなと。他のOMS君のビートともちょっと違う感じで。


    W:バースごとに音色が変わったり、ベースが終盤で乗っかってきたり……反則ですよね。

    b:しかもどんどんBPMが遅くなっていくんで、フックも全部違うのを録ったりして(笑)。


    W:DJ泣かせな感じだ(笑)。アルバムの中では特にフロウも自由な感じで、色んなスタイルを試してるような印象を受けました。

    i:そうですね、個人的にもあの曲は好きです。いつもより早く書けたし。

    b:in-dもpalも早かったよね。だから俺はフックだけにしようと思って。




    W:こういう楽曲たちを順に見ていくと、プロフィールにある「Dis○ey & Rap」っていうコンセプトも腑に落ちる気がします。つまりあの毒気やサイケデリックさを隠し持ってる、危ない方のDis○eyも含めてですよね……いや、むしろそっちが本質なのか。

    b:そうですね。「F**tasia」とか本当に狂ってると思うし。


    W:他の作品だと、あの象が酩酊するやつとか。

    b:あの「ピンク・エレファント」のシーンを見てるのがアルバム・ジャケットの写真なんですよ。ピンクとネイビーで照らされてる所。


    W:ああ、それで納得いきました(笑)。

    b:ドキュメンタリーを見ると、階段を登る音を再現するために、おっちゃんたちが必死で革の財布をギュッギュッってひねったりしてて……こいつらイカれてるな!って(笑)。そういうことを音楽でやってみたいと思ったんですよね。


    W:謎が色々解けた所で最後になりましたが、WE NOD BLOGの読者に向けて一言もらっていいでしょうか。

    b:そんな感じでジャケットも歌詞カードも、細かいデザイン含めて色々詰め込んであるんで、じっくり見てもらえたら嬉しいです。口では言ってないメッセージも一杯入ってるので。


    W:まさに、ですね!長時間ありがとうございました。


    (interview & text : yuichi ishikuro)
    レーベル情報:http://www.summit2011.net



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