2012.11.09 Friday
【記事】丸

"藤沢のドン"。この呼び名が生まれたのは、僕の記憶が正しければ、何年か前、丸が主催していた藤沢駅サンパール広場でのサイファーにおいてのやり取りの中だと思う。当時は半ば、いやほとんど冗談としてだったけど、丸が活動を続けていく中でその呼び名にふさわしい存在となっていったことは彼のことを深く知る仲間であれば、よくわかる事実なはずだ。グループでコンスタントに活動していた時期を含めると決して短くはないキャリアとその中で築きあげてきたスキルとプロップスを考えれば、遅すぎる1stアルバムなのかもしれない。しかし、ここで改めてこのアルバムタイトルを思い起こして欲しい。「TIME FOR SOME ACTION」。丸にとっては、今がその時だった。それだけの話だ。アルバムに込められた彼の思いに少しでも触れてもらえば、その短くはない間に彼が何を考え、何を感じ、どう行動してきたかが、そして、その時間がいかに「"かけがえのないもの"だったのか」が、ハッキリと伝わるはずだ。僕は丸のラップがこれから決して少なくないあなたのようなHIP HOPファンにとっても"かけがえないのないもの"になることを約束する。「TIME FOR SOME ACTION」、この素晴らしいアルバムと出会う時、今がその時だ。
それでは、彼のことを僕のように深く知らないあなたのために少し彼自身について、そしてこの作品について、丸本人に語ってもらうことにしよう。
■アルバム発売おめでとうございます。まずは、HIP HOPとの出会いとラップするきっかけは?
高校が男子校で周りはバンドとかDJやってる奴が多かったんですよ。地元ではブレイクダンスしてる奴も多かったし、その影響が強いです。それまでパンクやミクスチャーばかり聴いてたんですけど、DJやってる奴が居てそいつの家に遊び行ったらバリバリ二枚使いしてたのが衝撃的でターンテーブルとミキサーを速攻、買いに行きました。で、その時期に同級生でパーティーを開こうっていう話になってまだDJできるほどヴァイナル持ってなかったし、ダンスもできないからラップやれって友達に無茶ぶりされてライブしたのがきっかけです。でもそのパーティーでのライブは本当、最悪でリリックをほとんどすっ飛ばしてとりあえず「YO!」とか「YEAH!」とか言って場を繋いだ…いや、全く繋げてないんですけど皆の前で生き恥さらしたっすね(笑) それが悔しくて本格的にやりだしました。
■シーンで丸さんの名前を知られるようになったのは、MCバトルでいい結果を残されるようになったのが、大きいと思います。またご自身でもMCバトルを主催されたりしてますが、MCバトルやフリースタイル、サイファーなどは丸さんにとってどういうものですか?
MCバトルは名前を売る為に1番てっとり早かったし曲になると変に構えちゃってリリック書けない時期だったからフリースタイルならいけると思ってかたっぱしからエントリーしてました。一時期、ハマって家で四六時中フリースタイルしまくってたら隣の部屋の姉に「もうやめて!ノイローゼになる!」と本気で怒られたので藤沢駅のサンパール広場っていうところでラッパー集めてサイファーしたりして遊んでました。地元でMCバトルを主催したのはその流れっすね。藤沢を盛り上げたいっていう気持ちがあったし、UMBや3on3で優勝してからは特に、皆に"優勝"という経験をしてもらいたいという想いが大きかったです。
■アルバムを作られるというのを聴いてから、完成までにかなり時間がかかった印象があります。ここまで制作が長くなった理由を教えてください。
ソロでやる前は1人で1曲丸ごと作った事がなかったしミックス、マスタリングから何もかも始めてで、かなりその点でいろんな人に迷惑かけてしまいました。でも次作る時はノウハウは得たのでここまで延びることはないと思います。ただ、大体形になって発売日を決めて出すってなった時に結構、珍しい病気にかかっちゃって製作終盤の大事な時に「すぐに入院しないと廃人みたいになっちゃうよ」って医者に脅されて延期になりました。おかげで金はぶっ飛ぶし、人前ではそんな姿見せなかったですけど精神的に落ちてましたね。今はおかげさまで元気ですよ。アルバム予約してくれた人、お待たせして申し訳ないです。
■アルバムを作る中でどういったテーマをもって制作されましたか?
何かと音楽を言い訳に生活面でないがしろにしてる部分が多かったし、その割に音楽とまともに向き合ってなかった。自分でもこのままでいいのかと自問自答した結果、本腰入れて現状を変えなきゃと思いTIME FOR SOME ACTION(行動する時間)というタイトルをつけました。やっぱりHIPHOPが好きだしRAPも好き。でも年齢的に、続けてく為には行動するしかない。そういった内容が多いと思います。あとは日々思うことだったりパーティーのアガリで震災後、東北にボランティアに行ったんですけどその時に書いた曲とかもありますね。ソロになってからの作品集です。
■アルバムに参加しているアーティストたちについて教えて下さい。
MCは身内の中から4人声かけました。
【BEN THE SCIENCE】は高校の頃の同級生で知り合った頃はビートルズみたいな髪型しててHIPHOPとは無縁だと思ってたのに卒業してから数年後にクラブで再会してお互いラップやってたっていう流れでずっとツルんでるっす。バースの中に絶対クスリとするパンチラインがある。面白くてくだらないのにラップが上手いっていう(笑)
【あるま】は身内の中では誰よりもラップ上手いっすね。リズムキープが飛び抜けてる。俺がまだラップしてない時、クラブでPAやってたらステージでライブしてて食らいました。天才で変態ですね。
【Dr.HIDE】は前に一緒にラップしてた相方で今は現場を退いてるんですけど、どうしても一緒にやりたくてトラックもラップも両方やってもらってます。
【SHINK】はオレのラップスタイルに近いものを感じるんです。聴いてて胸を熱くさせられる事が多くて頼みました。一緒にMUSTHARDのデザインを担当してます。
【1008professor】はあるまがグループ組んでた時のDJでこのアルバムの軸っす。まだ作品が流通するのは始めてで今後注目株っすね。曲のテーマを伝えるとそのテーマに合うビートを作って来てくれるし色々な面で助けてもらいました。
【LAZY SHOT】はDELCATECKのトラックメーカーで鎌倉の山奥に住んでてたまに下山して来てドス黒いビート渡してくれる仙人みたいな人です。
【BEAT奉行】も昔から知り合いで一番始めにトラックもらいました。アルバムの中でもいい意味で浮いてるトラックですね。uprisingはソロで初の曲だからラップのアプローチも他の曲と全然違うけどこういうのもあっていいかなと思って収録しました。
【NAGMATIC】はD.L.I.Pのトラックメーカーでもはや説明不要。音の鳴りがヤバイ。サンプルの時点で出来上がってる。
【SHIN-SUI】はDELCATECKのMCで今は現場を退いてるんですけど、いきなりスキットっぽいの出来たんで使ってくださいって言ってきてちょうどカラーにはまったんで採用させてもらいました。
■丸さんのホームイベント「村おこし」の盟友たちが多く参加してます。丸さんにとって村おこし、そして村一揆 MC'sはどういった存在ですか?
村おこしは元々はあるまが始めたものでいわばホームパーティーみたいな感じ。がっちりやろうぜ的なイベントではないし横浜の片隅で自由にやってるっす。村一揆というのはクルーとかそういう俺ら俺らって感じでもないし、皆それぞれスタンスもカラーも違う。でも気づけば隣に居る様な感覚です。でもいろんな奴が居て面白いっすよ。ただフライヤーに丸(村一揆)って書かれると字面がなんか山賊みたいで怖いのでレーベルMUSTHARD RECORDSを作りました。
■アルバムの中でもラップされていますが丸さんにとって地元・藤沢とはどういう町ですか?また、藤沢のHIP HOPシーンについて教えてください。
神奈川っていうと横浜ってイメージじゃないっすか。グループでは相方が横浜だったんで横浜の曲とか作ったんですけどやっぱなんか違うなって思って。藤沢にはF.A.Pをはじめクラブが数件あるおかげで小さいですけどシーンはあるし基本的にゆるい人間が多いっすね。夏は特にだけど、観光地で外から来る人はマナーがなってない人が多いっていうか平気で浜辺にポイ捨てして帰るし海は汚いし嫌いな面もあるけど生まれ育った街だし離れられないですね。
藤沢のシーンは以前よりも活気付いてます。DINARY DELTA FORCEやBLAHRMYはラップ始めたばっかの頃から観て来て本当、尊敬してるしいつも刺激受けてる。MAD DICEしかり面子がマジで濃いっすね。HAIIRO DE ROSSIも藤沢のMCだしZZのDEEP SAWERは中学の先輩です。DJ ZASSY CHEE、DJ ARTといった黒い選曲するDJも居るしDJ K.DA.BやDJ WATARUの様にメインストリームをかけてぶちあげるDJも居る。藤沢長後(LONG BACK)はオレが最も尊敬するDJのWATAKIやTHROB、DJ UME、DJ KO-1、LAID BACK、あと実はTARO SOULも長後出身なんですよ。DJ URUMA、DJ LEX、K.A.I、SHINK、大地、山河と隣町の鎌倉の面々や、茅ヶ崎にはSUPA DUPA FLYってぶっ飛んだダンサーやDJ KILLER SHARK、ILL BEATS TALKS、DJ 731、平塚にはDJ LUCHAが居て今後若い子達もドンドン出てくると思うんで藤沢に遊び来てくれると嬉しいっすね。
■このアルバムをリリースした後はどういった活動をしていきたいですか?
まずは自分の生活を建て直していきたいですね。色々な人に迷惑をかけて来たんで。もちろんライブは今以上にやっていきます。ただアルバムの曲は3年前ソロになってから書いて来たものだからブランニューも作りつつMUSTHARD RECORDSで仲間の製作をサポートしていきます。世の中には才能あるのに自分の力だけじゃリリースできない人も多いと思います。年齢を重ねてフェイドアウトして行く、または音源を出して卒業していってしまうっていうのは余りにも切ないですよね。オレの場合は何度かくじけそうになったけど「才能ない奴はダメだ、その言葉に負けたらそれまでだ」っていうSTERUSSのCRIME6さんのライムに何度も勇気づけられてリリースまでこじつけた。だから周りが音楽を続けていける環境を作っていきたいです。それが今の自分の夢です。
■最後にメッセージをお願いします。
最近、よく聴く英語の響きに似たラップではありません。そういうラップは個人的に聴くのは大好きだし憧れはあります。でもオレは日本語の響きで、一発で何言ってるのか聞き取れるようなスタンダードなラップを続けていきます。まだヘタクソだなーって思うし、もっとラップ上手くなりたいから、これからも作品やライブで足跡残していきます。アルバムを聴いて、もし引っかかったら現場に足を運んでくれると有難いです。
ARTIST : 丸
TITLE : TIME FOR SOME ACTION
FORMAT : CD
LABEL : MUSTHARD RECORDS
RELEASE : 2012.11.7
SPECIAL OFFER!! : 特典付き
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